マンション投資に乗り出す
購入した不動産を継続して保有し、そこから得られる収益を期待する一定期間保有後、転売することを前提として購入するパターン前者は地域の資産家や優良企業が主体となるが、キャッシュフロー経営の重視により企業の資産圧縮が進められている過程で、やや低調となっているのが現実である。
一方、後者は外資系企業をはじめとした投資銀行・ファンド会社が主体で、昨今の投資家の主流となっている。
証券化商品も原則的に、この考え方に入るものと思われる。
なお、やや例外的であるが特に注意を要するものとして、東京で言えば銀座の一等地や再開発の一等地に所在する物件では、非常に金余りの企業が自社のランドマーク的な意味合いを持ってビルなどを取得することがある。
この場合、ランドマーク的な価値と一等地ならではの稀少性から合理的根拠を超えた利回りで売買が成立することがある。
たとえば、不動産業界では一般的に「利回り6%確保が目標」という言葉を聞く。
厳格な理論によって裏付けされたものではないにせよ、これまではキャピタルゲインが期待できたゆえ、このあいまいな考え方もそう問題にはならなかった。
一方で、インベストメントバンクや不動産ファンドなどの目標利回りは2桁が通常である。
この利回り設定の差はどこからくるのか。
しかも、外資系の多くはインカムゲイン型で利回りを設定している。
ここ数年、「自己資本比率」という言葉がキーワードになっている。
しかも、投資に対していくらの利回りが確保できるかを期間損益ベースで、目標設定するケースが増えている。
投資をベースにするため、「運を天に任せる」ような行動では投資家に責任を持って説明できない。
したがって、一定の情報開示や説明責任が発生する。
それを解決するには、「いかに安く購入するか」が最大の課題となる。
前述の算式を書き換えると、価格が分母になる。
キャップレートを上げようとすれば、純収益を増加させるか、購入時の価格を下げるかしか方法がない。
純収益(↑上げる)キャップレート(還元利回り)収益価格(↓下げる)このように、単に所有することが目的の場合と異なり、「投資」という範晴に入ってきた場合は当然に利回りが重要になる。
漠然と「6%が目標」というのでは、経営努力はないに等しくなり、お粗末である。
前項(不動産の継続保有)の場合は保有を原則とするので、各期に生み出される収益の適切な予測とそれに対する利回りの設定ということになる。
一方、後項(将来的な転売前提)の場合は、各期に生み出される収益の適切な予測及びそれに対する利回りの設定をまず行うことになる。
最終的には、売却を行う際に別の投資家に売却をすることになるわけであるから、この最終の利回り(所有期間利回り)を考える必要がある。
なお、各期に生み出される収益に対する利回りを割引率、最終的に売却を行う際の利回りを「最終還元利回り」(ターミナルレート)という言い方することがある。
これらの考え方は、債券や一般的な投資となんら変わることがない。
しかし、日本では税制の壁が厚いため、他の欧米諸国に比べ、不動産を投資商品とする場合にはさまざまな注意が必要だ。
表面利回りだけで判断することは非常に危険で、税引後ベースを含めたネットベースで吟味することは大前提となる。
たとえば、不動産流通税と呼ばれる不動産取得税や登録免許税、そして消費税などは不動産の変動リスク(税金面)として大きなウエートを占める。
さらに、地震国であるわが国では、地震保険の加入によるリスクヘッジなど、幾重にもキャッシュフロー確保をするための方策が必要になる。
したがって、このようなリスクを積み上げ方式で加算していくと、求められる投資利回りはある程度は高くなっていく。
この動きが、不動産購入代金自体への「下げ」要求になっていくわけだ。
次に、ここ数年、一般的になってきた収益還元法について触れてみたい。
一口に、収益還元法といっても実はいくつかの手法がある。
ここではもっとも基本的なものとDCF法による2つのものを説明する。
1 基本式これは、各期に生み出さされる純収益を、還元利回りで還元して収益価格を求める式である。
ここで注意すべき点は「純」収益すなわちネット収益をどのように求めるかということである。
2 純収益純収益は不動産が生み出すであろう総収益(グロス総収益)から空室損や貸倒れ損失を差し引いて実効総収益を求め、そこから費用を控除して求めたものである。
3DCF法DCF(DiscountedCashF1ow)法は、キャッシュフローの割引を意味する。
DCF法はその不動産から将来得られるキャッシュフローの割引現在価値の合計をもって不動産の評価額とする手法で、アメリカにおいて収益用不動産を鑑定評価する場合に主として用いられているが、日本でも最近定着しつつある。
この手法は不動産を一定期間保有したのち、転売するという投資家の行動に基づく手法で、式に示すこともできる。
ノンリコースローンの担保不動産や不動産証券化商品の不動産の評価においてもこの考え方が妥当と考えられる。
近年多く売買された不良債権担保不動産の評価においても、この手法が多く採用された。
アメリカでは10年間ビルを保有し、その後は転売というシナリオを描く投資家が多い。
その理由として、アメリカのビルや店舗の賃貸借契約がおおむね10年をメドに契約されていることが挙げられる。
現在の日本においてこの手法を適用する際の問題点は次の通りである。
日本の場合、事務所、店舗の賃貸借契約の期間が1〜2年というものが多い。
したがって10年間の予測については現状の賃貸借の状況からただちに予測できるとは言い難い。
毎期のキャッシュフローは2〜3年先まではある程度適切に予測できるかもしれないが、その後についてはかなり不確実性が入る。
なお、2000年3月から定期借家制度が導入されたが、この制度が浸透するまでにはかなりの時間を要することが予想される。
賃料水準が一般的な賃貸借契約と明確な格差がないことも課題の1つとなっている。
現時点の地価動向から、10年後の不動産の価格水準を予測することは、かなり困難であると考えられる。
なお、不良債権担保不動産の評価におけるDCF法適用の際の転売までの期間は2〜3年、長くて5年で設定するようになっていた。
DCF法は収益還元法の中でも最も優れた手法で、今後はこれが主流になるという意見を多く聞く。
しかし、このような日本の賃貸借慣行に大きな変化がない限り、その妥当性には疑問がある。
DCF法に用いる割引率には、各期間に入るキャッシュフローの期間割引を行うキャップレートと、転売時の転売価格を求める際に用いられるターミナルレートがある。
ターミナルレートは各期間のキャッシュフロー割引率に比べ、予測に不確実性がありそれをリスクとしてとらえるため高めに設定されるのが一般的である。
ここでは、投資家がリスクの内容や程度をどうとらえるかがポイントとなる。
開示情報が少なければ、それはリスクの上昇につながる。
したがって、レート設定も高くなる。
今やこの図式は一般的なものである。
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